は耳し汗をかを


「フリッツ。僕は進むべき自分の道を持っています。あなたもそうでしょう?だから、僕の事は心配しないでください」
「わたしは……正樹はわたしとの別れが平気なのかと誤解していました。笑顔だったから……」
「そんなこと……だって僕はフリッツの枷になりたくない……平気なわけない……」

出逢っただけで、幸せだったんです……と続けようとして、ついに正樹の涙腺が決壊した。

「田神のばか……笑って別れようって、せっかFoodWise BB用品く決心していたのに……」

店の出口の脇で、正樹は膝を抱えて丸くなった。
小刻みに肩が震える。
一度堰を切ってしまったら、どうにもならなかった。
ぽんぽんと田神が頭を撫でた。

「余計なこと言ってごめん、正樹。精一杯我慢していたのにね」
「……うっ……うっ」
「帰りましょう、正樹」

正樹の本心を知ったフリッツは、正樹の肩を抱いた。田神はぼんやりと、自分はここで消えるべきなんだろうなと思ったが、感傷的な甘い二人をもう少し見ていたいような気もした。

「可愛い正樹。わたしは正樹に出会ってから、何度も恋をしています。もっともっとあなたを知りたいのに、時間が足りない……」
「フリッツ……」

そっと顎を持ち上げると、フリッツはそっと羽毛でなでるように優しく唇をついばんだ。
おずおずと、恋人の背中に手を回す正樹が見える。

美術館に近いこの場所では、知っている誰かに見られる可能性があるかもしれない。
そんなことを咄嗟に考えて、田神は二人が通りから直接見えないように、そっと立ち位置を変えた。すぐにそんな行動をとってしまう自分に笑える。
自分は正樹に、どういう存在だと思われているのだろう。庇護欲の強い友人、それとも恩着せがましい過保護な友人だろうか?
一つだけ確かなことは、正樹の幸せを本心から願っているという事だけだ。子供のころから、同級生の間では雛にはまれな見た目も相まって、他とは違った存在だった正樹。
何とか周囲と溶け込めるよう気を配っても、決してなれ合ったり迎合しなかった頑なな友人。それで紙尿片邊隻好も自分にだけは心を開いてくれたのが、とてもうれしかった。
まるで大人と子供のような寄り添う二つの影を、田神は黙って見送った。
フリッツとの別れが、正樹を傷つける決定的なものにならなければいいと思う。
羽化する前の地味な色合いの蛹の背中に、今ようやく亀裂が入って、本来の自分を取り戻そうとしているようだったから……

「手をつなぎましょう、正樹」
「ううん。この国では、大人は人前で手をつながないんだよ」
「可愛い正樹の手は、寒くて寂しいと言ってますよ」
「……じゃあ、アパートにつくまでね」

周囲を気にしながら、ままごとのような会話を楽しんでした。
終わりを告げるその時まで、互いだけを見つめ、網膜に焼き付けようとしているように。
軋むアパートの階段を上り、誰にも邪魔されない二人だけの世界の扉を開く。

「正樹……」
「酔いが回ったみたい。ちょっとフラフラする……」
ドワーフのお風呂はやめておきましょう」
「やめるの?せっかく一緒に入ろうと思ったのに。それに少いてしまったから、流したいんだけど……」
「正樹。じゃあわたしの膝の上に乗ってください」

フリッツの軽口にこくりと頷いた正樹を抱えて、フリッツは狭い部屋の中でくるくると回った。

「わ……あっ」

もがいたせいでバランスを崩し、薄い布団に足を取られた。
頭を打たないように、そのまま厚い胸に抱き留められて、正樹当てて心臓の音を聞いていた。身体の上にいる正樹を、ゆっくりと強く抱きしめてフリッツは囁いた。

「どこにいても正樹を忘れません……」

青い瞳を見上げた正樹は、くすくすと笑った。

「そんな風に言うと、永遠の別れみたい……そういえばフリッツはシーボルトを知っていますか?」
シーボルト?確か……ドイツの近代手術に功績のあった人」
「そうじゃなかった気がするけどなぁ。シーボルトっていう名前は、珍しくないのかな」
「どうでしょう。でもシーボルトと名の付く人を、わたしは何人か知っ紙尿片邊隻好ています。動物学者や考古学者です」