必は全身を投げ出に


直正の指を二本、きゅっと握り締めて、いつも一衛は遅れまいとして小走りに急ぐ。
その一衛が橋の上で泣いている。
「そこにじっとしておいで。いいね。怖くとも、わたしが行くまで決して立ち上がってはいBB便秘けないよ。」
「直さま……直さまが作ってくださった……竹とんぼが、あそこに。」
「ん?竹とんぼ?怖くて足がすくんだのではなかったのか。」

細い橋の上から、一衛は渦の中でくるくる回るおもちゃを指さした。

「ああ、落してしまったのか。」
「あい。」
「よし、取って来てやろう。」
「直さま?」
「一衛を頼む。」
「え?直さん。川は駄目だ。ほら。川岸を削るほど水が速いのだから。」
「水練は得意だ。このくらい雑作も無いさ。」
「網を探して来よう。」
「いや。いい。回っているうちに早く取ってやらないと、直ぐにも流れてしまいそうだ。」

細い橋の上で、友人の手に一衛を渡し、書物と刀を預けると直正は迷うことなく着物を脱ぎ、下帯一つになると、ざぶりと水かさの増した激流へと身を投じた。

「あっ!直さんっ!?」
「やめろって!」

濁り水はうねり、たちまち直正は飲み込まれた。
姿が見えなくなった一衛は、思わず悲鳴を上げた。

「直さま~っ!」
「いかん!直正が溺れる!誰か、助けを……あっ!浮か靜脈曲張手術んだぞ。」
「大丈夫か、直さん!」

ぷかりと頭が浮かぶと、そのまま直正は抜き手を切った。反対の川岸へと向かおうとしている。
しかし水流は激流となって直正を飲み込もうと襲った。水流に抗う直正はなすすべもなく濁流に流されてゆく。

「直さま~っ!」

一衛は年長者の手を振りほどくと、細い橋を向こう岸まで一気に走った。
直正の身体は濁り水に揉まれながら、どんどん下ってゆく。

「しっかりっ、直さま!」
「一衛の所まで!もう少しです!」

一衛の声に励まされるように、直正が岸に近づいて来る。
懸命に手を伸ばし、一衛は直正を捕まえようとなった。足元がずぶりと柔らかくなった土に沈み込むのも気にせず、一衛すようにして腕を伸ばす。

「直さま、もう少し!」
「直さん、しっかり。」
「腕を伸ばして、掴まれ!」
「直さまっ!」

直正がやっとの思いで握った一衛の手を、背後から追ってきた子供たちの手が支え、直正の身体を引き上げようとするが、思いのほか水の勢いが強く、なかなか川岸へ上がれない。
子どもたちの騒ぐ声に、近くで野良仕事をしていた男が気付き、ぐいと直正の両手を掴み岸へと引きずり上げてくれた。
その場で大きく肩で息をする直正に、一衛はしがみついた。

「直さま!直さま……ぁ……あ~ん……」

息を整えた直正は、一衛の手を血管瘤手術開かせると咥えて来た小さな木片を乗せてやった。

「ほ、ら……一衛。これだろう?」