時間がすっかり


「そうなんだけど……あまり食べたくないんです……フリッツこそ食べて。だけど、もっとちゃんとしたものを、買っておけばよかった……こんな物しかなくてごめんなさい、フリッツ……」
「わたしは世界中を旅してきましたから、なんでも食べられます。屋根があって、可愛い正樹が傍に居て、スプーンがある。とても幸せです」
「フリッツも、田神のように僕を甘やかすんですね」

やっと微笑んだ正樹に、フリッツも安堵したようだ。

「可愛い正樹、わたしが好き?」
「それは……言わないと通じませんか?一晩中、抱き合っていても、僕の気持ちはわかりませんか?」
「確かめたいんです。わたしにはフォースの力はありませんから、言葉にしてください」
「ん~……」

好きという単語で済ませたくはなかった。
正樹は言葉を探しながら、しばらくの間、沈黙していた。
どういえば、気持ちは通じるだろう。
自ら足を踏み出して手に入れた恋人は、心の底まで見えるような澄んだ空色の瞳でじっと見つめている。
フリッツは、綺麗ごとではなく、取り繕わない赤裸々な本心を知りたがっているような気がする。
正樹は観念して、重い口を開いた。

「……僕はフリッツが傍にいると、初めて本当の自分でいられると思ったんです」
「本当の正樹……?それはどんな正樹?」
「説明が難しいです……僕は長い間、周囲に人がいても、ずっと孤独でした。男性しか好きになれないと自覚してからも、なかなか誰かを好きになる勇気が持てませんでした」
「田神さんは?」
「田神は友人です。彼には愛する女性がいますから、彼の手は彼女のものです」
「そうですか」
「分かり合える恋人が欲しくないわけではなかったけれど、人付き合いが苦手なせいで、うまくゆきませんでした。前に話したでしょう?僕の周囲には、これまで田神以外は、僕を根こそぎ奪おうとする人ばかりだったんです。僕を知るよりも先に、強引にすぐに抱こうとする人ばかりでした。そういう愛の形もあるのも知っていますが、そうしたくはありませんでした」

恋するたびに、何度も悲しい目に遭って、諦めてしまったのだろうと、フリッツは理解した。
心をつなぎたくとも、常に体と行為を求められて、正樹は疲弊してしまったのだ。優しく包まれて、正樹も力を抜いてゆったりと身を預けた。
どれほど名残惜しくとも、逞しいこの腕も厚い胸も、もうすぐいなくなってしまう……
そう思うと素直に、言葉にできた。
正樹は唐突にねだった。
不思議そうに頭を傾けたフリッツは、ふと別れの来たのを思い出す。
互いから離れた隙間に、暖房のない部屋の冷たい空気が流れ込んだ。
それが現実だというように。

「卵はどこで買えばいいですか?」
「角のコンビニにあると思います」
「可愛い正樹が望むなら、今すぐ買ってきます」
「ありがとう……荷物を忘れないでね」

涙で滲んだ笑顔を向けると、正樹はフリッツの首に手をまわして、自分から最後の深いキスをした。出逢った時と同じ服装で、大きなデイバッグを背負ったフリッツは、静かに部屋を出た。
離れがたくなる別れの言葉は必要なかった。
窓からそっと階下を見下ろすと、見送る正樹に気づいたフリッツが笑顔で大きく手を振る。

「フリッツ……!」

は耳し汗をかを


「フリッツ。僕は進むべき自分の道を持っています。あなたもそうでしょう?だから、僕の事は心配しないでください」
「わたしは……正樹はわたしとの別れが平気なのかと誤解していました。笑顔だったから……」
「そんなこと……だって僕はフリッツの枷になりたくない……平気なわけない……」

出逢っただけで、幸せだったんです……と続けようとして、ついに正樹の涙腺が決壊した。

「田神のばか……笑って別れようって、せっかFoodWise BB用品く決心していたのに……」

店の出口の脇で、正樹は膝を抱えて丸くなった。
小刻みに肩が震える。
一度堰を切ってしまったら、どうにもならなかった。
ぽんぽんと田神が頭を撫でた。

「余計なこと言ってごめん、正樹。精一杯我慢していたのにね」
「……うっ……うっ」
「帰りましょう、正樹」

正樹の本心を知ったフリッツは、正樹の肩を抱いた。田神はぼんやりと、自分はここで消えるべきなんだろうなと思ったが、感傷的な甘い二人をもう少し見ていたいような気もした。

「可愛い正樹。わたしは正樹に出会ってから、何度も恋をしています。もっともっとあなたを知りたいのに、時間が足りない……」
「フリッツ……」

そっと顎を持ち上げると、フリッツはそっと羽毛でなでるように優しく唇をついばんだ。
おずおずと、恋人の背中に手を回す正樹が見える。

美術館に近いこの場所では、知っている誰かに見られる可能性があるかもしれない。
そんなことを咄嗟に考えて、田神は二人が通りから直接見えないように、そっと立ち位置を変えた。すぐにそんな行動をとってしまう自分に笑える。
自分は正樹に、どういう存在だと思われているのだろう。庇護欲の強い友人、それとも恩着せがましい過保護な友人だろうか?
一つだけ確かなことは、正樹の幸せを本心から願っているという事だけだ。子供のころから、同級生の間では雛にはまれな見た目も相まって、他とは違った存在だった正樹。
何とか周囲と溶け込めるよう気を配っても、決してなれ合ったり迎合しなかった頑なな友人。それで紙尿片邊隻好も自分にだけは心を開いてくれたのが、とてもうれしかった。
まるで大人と子供のような寄り添う二つの影を、田神は黙って見送った。
フリッツとの別れが、正樹を傷つける決定的なものにならなければいいと思う。
羽化する前の地味な色合いの蛹の背中に、今ようやく亀裂が入って、本来の自分を取り戻そうとしているようだったから……

「手をつなぎましょう、正樹」
「ううん。この国では、大人は人前で手をつながないんだよ」
「可愛い正樹の手は、寒くて寂しいと言ってますよ」
「……じゃあ、アパートにつくまでね」

周囲を気にしながら、ままごとのような会話を楽しんでした。
終わりを告げるその時まで、互いだけを見つめ、網膜に焼き付けようとしているように。
軋むアパートの階段を上り、誰にも邪魔されない二人だけの世界の扉を開く。

「正樹……」
「酔いが回ったみたい。ちょっとフラフラする……」
ドワーフのお風呂はやめておきましょう」
「やめるの?せっかく一緒に入ろうと思ったのに。それに少いてしまったから、流したいんだけど……」
「正樹。じゃあわたしの膝の上に乗ってください」

フリッツの軽口にこくりと頷いた正樹を抱えて、フリッツは狭い部屋の中でくるくると回った。

「わ……あっ」

もがいたせいでバランスを崩し、薄い布団に足を取られた。
頭を打たないように、そのまま厚い胸に抱き留められて、正樹当てて心臓の音を聞いていた。身体の上にいる正樹を、ゆっくりと強く抱きしめてフリッツは囁いた。

「どこにいても正樹を忘れません……」

青い瞳を見上げた正樹は、くすくすと笑った。

「そんな風に言うと、永遠の別れみたい……そういえばフリッツはシーボルトを知っていますか?」
シーボルト?確か……ドイツの近代手術に功績のあった人」
「そうじゃなかった気がするけどなぁ。シーボルトっていう名前は、珍しくないのかな」
「どうでしょう。でもシーボルトと名の付く人を、わたしは何人か知っ紙尿片邊隻好ています。動物学者や考古学者です」

なる上に身ま


「朔良。何度も話をしただろう?」

「だって、本当に卒業式かどうか、わからないもの。おにいちゃんは、ぼくをほおっておいてそのまま誰かと遊びに行ってしまうんだ。やだ。」

彩はため息を吐いた。朔良は入院して以来、すっかり聞き分けの悪い子供のようになっている。寝台の横に膝蓋痛治療腰を掛けて、彩はそっと朔良に一枚の紙を見せた。

「朔良。……ほら、これが式次第だよ。ちゃんと今日の日付と時間が書いてあるだろう?俺も両親に出席してもらいたいし、卒業式位出ておきたいんだ。もう最後なんだよ?」

朔良は彩の様子をうかがった。

「おにいちゃん……怒ってる……?」

「怒ってなんかない。朔良は昔から一人で留守番するの嫌いだったからな。式が終わったら、すぐに戻ってくるから、少しの間一人で待っていて。おみやげは何が良い?いい子にしてるなら何か買って来てやるよ。」

うさぎやモンブラン?シュー……おにいちゃんと食べる。」

「二時間待ちのやつか。まあ、いいよ。朔良が食べたいなら、並んで買って来てやる。」

「……買ったらすぐに帰ってくる?」

見つめる朔良に彩は肯き返した。まだ身動きもままならない朔良の足の状態は酷かった。手術できる状態になるまでに、20日近くを擁した。
全身麻酔で八時間もかかった手術後、数日して局所麻酔で三時間、整復に時間がかかった。
足首にはボルトが二本突き出していて、術後の朔良の足を見た母親は、その場で脳貧血を起こした。

「こんな大きな傷が残るんですか?!先生、この子まともに歩けるようになるんですか?元通りになるんですか?」

「よさないか、紗子。」

「だって、あなた!朔良が……」

手術の成功を告げた外科医に食い下がる激光矯視母親をなだめながら、父親はちらりとそこにいる彩を頼った。

「済まないね、彩君。紗子は朔良の事に関しては、平常でいられなくてね。君にもきついことを言うかもしれないが、我慢してくれよ。」

結婚して長く子供に恵まれなかった朔良の母親にとって、朔良は文字通り我身を削った分身だった。しかも小さく生まれた体も弱かったので、傍目には過保護に見えるほど甘やかして大切に育ててきた。朔良の両親にとって、朔良は何物にも代えがたいただ一つの掌中の玉だった。

「いいえ、叔母さんが言うのは無理ないです。朔良にも叔母さんにも悪いことをしたと思ってます。もう学校は自由登校だから、少しでも良くで当分朔良の傍にいます。」痛みに耐えかねて呻く朔良を励ましていた彩だったが、正直言って朔良の機嫌を取るのは骨が折れた。朔良は彩が傍に居る事のみを求めているように、側から離れることを極端に嫌がった。
父親から、彩がその年の大学受験を諦めたことを聞かされても、そうなんだと返事をしたきり気の毒がったりもしていない風だった。
それほどの犠牲を払っても、彩が傍に居さえすればいい、歩けなくても構わない……そんな風に思っているのではないかと思えるほどだ。

短時間の歩行訓練の度に、朔良は根を上げ涙を浮かべた。

「おにいちゃん……今日はもうお終いにする。」

「メニュー通り頑張るって約束しただろう?朔良はこのまま歩けなくなっても脱髮いいのか?ずっと松葉杖をついたまま過ごすつもりなのか?」

「おにいちゃんが傍に居てくれるなら、松葉杖でもいいよ。」

けたらも果たせ



口の中で、長い(?)舌が行ったり来たりした挙句、ぼくの舌の奥に巻き付くと、引き抜くように強く絡みついた。
気持ちいいかもしれないけど、息が出来なくて目の前が白くなってゆく

「おいっ!いい加減にしろよっ。」

そんな気合入れて、思いっきり吸い付いたら、息できないだろっ!」

どんとぼくに胸を突男士不育かれた海鎚家御当主は、ぺたりと尻餅をつき、片方の眉を上げて不器用に笑顔を作った。

なぜ、息を止める必要があるのだ?顔の真ん中についているそれは、おそらく呼吸に使うものだと思うがな。」

しょうがないじゃんか。キスするときにどこで息するかなんて、考えたことないし。

「できないもんは、できないのっ!」

クシナダは、もっと柔らかくて抱き心地良かったんだが、そなたは骨っぽい。口を吸うのも知らぬとは、やはりそなたは生地のままの無垢な赤子だ。」

うわ~むかつく~

骨っぽくて、悪かったなっ!これでも一応男だ。引きずった過去の女と一緒にすんなよっ!」

しまった、言い過ぎたと思ったけど、もう遅い。

真剣な顔で、海鎚家御当主は、無垢を褒めているのだがと寂しげに言った。
その夜遅く、とうとう本家での神楽の支度が始まった。
篝火に火が入り夜目に金色の火の粉が舞う。
青ちゃんは、ぼくと視線を合わさず、どこかよそよそしい。
ぼくが、過去の事を知ってしまったので、何となく居心地が悪そうだ。

転生の原因が、あの根性のひねくれたスサノオだとしてもね、今の青ちゃんの責任じゃないし、悪くないと思う。
そんなことで青ちゃんが責任を感じてへこまなくても良いんだよって告げてあげたかったんだけど、ぼくの支度は結構時間がかかったんだ。

ぼくの神楽の役は、当然クシナダヒメで、御当主の海鎚緋色は、オロチ。
これは、あたり前だな。
青ちゃんはもちろん、スサノオの役だ。

二人は、密かに練習していたみたいだけど、まあ昔の再現みたいなものだし。
まるで過去の体験をもう一度体感するような、不思議な感覚に襲われて、俺は少し緊張していた。

「あなたは、面をつけて、じっと前を向いていればよろしいのですよ。」

俺に白塗微量元素りの化粧を施して、真新しい着物を着せかけて、紅袴の家人は笑いかけた。

「とても、お可愛らしいクシナダヒメさまですこと。」

「おちんちん付いてますけど、姫でいいんですか?」

わざとそう言うと、返事の代わりに、何ともやわらかい笑顔が返ってきた。
最初、口が裂けたようで怖かった笑顔も、どうやら少し見慣れたみたいだ。

念願かなって、永久を誓った最愛の恋人とやっと約束をるのだから、みんなきっとうれしいに違いない。
これぞ真の大団円というやつだ。

ここに居るぼくは、今日からぼくでなくなって、鏡の世界のクシナダヒメが、新しいぼくになる。
ぼくは?
身体を失ったぼくの心はどこへ行くんだろうと考えると、ちょっと胸が寒くなったが、これ以上は考えないことにした。
もう、決めたことだ。
オロチがあんな切ない思いを抱えたまま過ごしてきた長い年月を思ったら、今ぼくにできることはこれしかないんだから

青ちゃんこれまでいっぱい迷惑かけたけど、もう会えなくなるんだよ。
ぼくのこと忘れないでいてね。
決心したはずなのに、ぐらぐらと決心は揺らぎ続け、情けなくも咽喉元から嗚咽がこぼれそうなのを必死で抑えた。

「ひっひくっ」

不意に、喉元に嗚咽がこみ上げて、ぼくは切なくなった。
女の格好をして、件(くだん)の鏡を覗き込むと、二重に写ったクシナダヒメが優しく笑いかけた。
珊瑚で出来た、桃の花のかんざしは永久に変わらぬ愛の贈り物。ない涙は、この変な張子のお面で隠れるし、何の心配も要らない。
ずるずるの着物を着て、鬘をかぶり、お面をつうぼくは古代に居たクシナダヒメだ。
青ちゃんのスサノオも、やはり面をつけ長い剣を持っている。
その剣の名前も今なら分かる。
青ちゃんの剣は、十束剣(とつかのつるぎ)というんだ。
あれで激しく戦ったんだよね。

面で視界がすごく狭くなっているから、よく分からないのだけど、雅楽で使うような笛の音や、太鼓の音がどこからか響く。

物語はオロチの妻問いから始まり、オロチとスサノオとの闘いになった。
親父とお袋は勿論、クシナダヒメの両親の役だ。
御当主の操る龍の大きな人形が出てきて、うねうねと紅の蛇腹がくねった。
多少慣れ降血壓食物たとはいえ、「長いもの」が自在に動き回るのはきつかった。

「クシちゃん、大丈夫?」

に乗りあっさり


悟の腕の中で見悶えする詩津を見やった、聡は詩津が行ってと頷くのを見た。
早くに父を亡くした詩津には、おそらく急患を心配する家族を思って、過去の自分と重ねたのだろうと思う。

「なるべく早く戻りますから。」

遠く離れた外科病棟に、聡を呼ぶ詩津の悲鳴は聞こえなかった。
詩津の持つ、ただ一人の人と寄り添って生きてゆきたいという、普通の幸せへの憧憬は悟には届かなかった。
勝手な思い込みと、邪推に詩津は打ちのめされ、明け方やっと緊急手術を終えて詩津の元に走ってきた聡DPM點對點は言葉を失った。

「俺のお譲りでいいのなら、やるよ。」

そう言って、横をすり抜けた兄は歪んだ笑みを浮かべた。
寝台に擴がった詩津の様子が全てだった。

「詩津さ???ん????すまない???。」
「聡さ??ん。」

二人抱き合って、目が溶けるほど泣いた。


********************************

(′;ω;`) あう~???今日は詩鶴の母ちゃんの詩津さんが~~!

此花、鬼畜~?
余りに悲惨なので心配してくださって、「新しいパパができました」を読んでくださった方がいらっしゃるみたいです。
拍手ありがとうございました。(*⌒▽⌒*)?←素直~

ランキングに参加しております。
応援していただけたら嬉しいです。此花


悟の行為に打ちのめされた詩津を、聡は懸命に支えた。

「結婚してください。詩津さん。」
「僕の育って来た環境は今更どうしようもないけど、優しいあなたが居てくれるだけで、僕はこの先ずっと幸せでいられます。」
「新しい人生を、これから一緒に生きよう、詩津さん。」

哀しげに微笑む詩津を、聡は時間をかけてやっと手に入れた。

「僕が幸せになるために、あなたが必要なんです。詩津さん。」
「だから???どこへもいかないでください。お願いだから。」

悟に凌辱された身を恥じて、詩津が立ち去ろうとするのを見越し、聡は必死だった。
嗚咽にDPM床褥阻まれて、最後は言葉になっていなかったと思う。
詩津は、何度断っても日ごと顔を見せ、曇りのない本心を告げ続ける聡の手を取った。
桜の花弁が祝福のように舞い落ちる中、花の精はそっと聡の胸に額を当てた。

「聡さん。詩津をあなたの奥さんにしてください。」
「詩津もあなたが、好きです。」

詩津がそう告げた時、聡はやっと手に入った最愛の人を抱きしめ嬉し涙にくれた。

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アメリカから帰国した兄は、総合病院への思いが高じるあまり、どこか頑なになって行ったように思う。
生まれた時から、旧家である澤田家の期待を一身に背負い何の自由もなかった兄。
その、唯一最後の砦のようだった医師としての自尊心を図らずも打ち砕いてしまったのは、弟である聡だった。
柔和な微笑みを浮かべているが、自分の欲しい物をと手に入れた弟に、内心は割り切れないものを抱えていた。

昔から、表向き仲の良い兄弟のようにふるまいながら、悟は弟に一線を引いていた。
全て親に敷かれたレールを走ってきた悟と違って、幼い頃から屈託なく自由にふるまう弟の方を両親は愛した。
悟は利口な子供だったから、就学前から兄弟の立ち位置に違和感を持っていた。

大人の目のないところで、キックスケーター転んでしまったとき、たまたま傍にいた兄は父に頬を張られた。
お前が付いていながら、怪我をさせるなんてと訳も利かずに兄を責め、聡の小さな傷口には院長自ら、絆創膏を貼った。
あれから悟の心の深い場所に鋭い棘は立ちこみ、そのまま癒えることはなかった。

母や家政婦や、お抱え運転手まで誰もが天真爛漫な聡を愛した。
何故なんだろうと、素朴な疑問がわいたが長男ゆえの期待だと、割り切った。
試験の点数が少しでも悪かったり、首位から転落したりすると父は悟と食事の時に口も聞かなくなる。
読みたい本も読まず、作りかけの帆船の模型も封印して死に物狂いの悟の努力を誰もわかろうとはしなかった。
天才肌ではなかった悟が、上位の成績を維持するには文字通り血を吐くような努Panasonic電解水機力が必要だった。
それを知っていたのは、隣の部屋の弟だけだ。

からかお


いつか目を輝かせ、身を乗り出して話を聞いている一衛だった。
直正と話をしていると、何故か心の憂さが消えてゆく気がする。直正も、明るく言葉を返す一衛の様子を見てほっとしていた。

「はは……いい返事だ。安心したよ。日新館に入ったからと言って、一衛の中身は何も変わっていなかったのだな。」
「いいえ、直さま。一衛はもう子供ではありませぬ。一衛はこれから鉄砲を習って、直さまをお守避孕 藥 副作用りします。」
「頼もしいな。では、わたしも一衛に負けないように励むとするか。」
「競争です、直さま。」

ふと直正は真顔になった。

「だがその前に、その腫れた肩の傷を早く治さなければいけないよ。本当は手も上がらないほど、痛むのだろう?寝返りも打てないで、夜もよく眠れていないはずだよ、違うか?」
「……ぁぃ。」



会津藩は、こうしてついに京都守護職を拝命する。
部屋に入りきれなかった家臣たちは、容保の決心を聞き廊下で咽び泣いた。
義に死すとも、不義に生きず……と、王城を守る京都守護職を引き受けた時、容保は身を切られる思いで決めた。
家老達も、それではまるで薪を背負ったまま火中の栗を拾うようなものと、歯ぎしりしたが、養子として入った容保には、誰よりも会津松平の藩主らしくあらねばならないという理由が有った。

「殿っ!殿は会津をどうするおつもりか!」

国から出てきた西郷頼母は、必死に避孕方法容保に食い下がったが、国許で蟄居謹慎するようその場で沙汰を受けた。

「もう決めた事じゃ。頼母、これ以上言うな。」
「殿!なれど!」
「諌言は受けぬ。そちは即刻国許に帰り、余がもう良いというまで謹慎しておれ。」
「殿っ!もう一度お考えくだされ!」

頼母は食い下がっていた。
彼にも家老としての強い矜持がある。

「くどいっ。どれほど言おうと、決心は揺るがぬ。」
「叔母上、お見送りありがとう存じます。一衛はわたしにしっかりと勉強すると誓ってくれたところです。な、一衛。」
「あい。しっかり励みます。御留守の間、国許の事はお任せください。」
「それでこそ、わたしの弟分だ。」
「直さま。あの……これをお持ちください。諏訪神社のお守りです……武運長久をお祈りしたのです。」
「そうか、皆の分もあるのだな。京でお会いしたら、一衛だと言って叔父上に渡しておこう。では、行って参ります。」

小雪のちらつく中、彼らは容保と共に華々しく出立した。
藩士たちは、ひとまず江戸屋敷に逗留する。
京都での本陣が決まったら、移動する手はずになっていた。
この後、江戸詰めの多くの藩士が、駐留地が決まった朝、一斉に京へと旅立った。

勇壮な旅立ちを見て、誰がこれから先の会津の塗炭の苦しみを予感しただろう。
皆それぞれの思いを胸に、隊列を見送った。
一衛も胸に印籠を抱き、直正の背に誓った。

「直さま。どうぞお達者で、存分にお励み下さい。いつ傍に参れるように、一衛も精いっぱい励みまする。」
「琉生は、まだお子様だもんな。心配するな、今まで待ったんだ。無理撒瑪利亞基金強いしたりしないよ。」
「ぼく……隼人兄ちゃんの知らないところで、尊兄ちゃんとキスしたよ。」

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はやん心を決



Tシャツの胸元に書いてもらったぎこちないサインを、誇らしげに見せる琉生を抱き上げた尊は、自分も昔、この遊園地で両親と飲食業 招聘共に戦隊ショーを見たことをぼんやりと思いだした。公演後、尊は多くの子供たちのように、どうしても玩具が欲しくて、両親にねだったのだった。
だが琉生は、子供たちが群がる物販コーナーへは行こうとしなかった。不思議に思った尊は何気なく聞いてみた。

「ねぇ。琉生くんは、きゅうこうじゃーのおもちゃとか持ってるの?」

持っているなら買う必要はないかなと、思った。

「きゅうこうブラスター?琉生くんは……ん~と、おもちゃは持ってないの。」
「そう。欲しくないの?ママに買ってって言わないの?」

琉生は困ったような顔をして、尊を見つめた。

「琉生くんは……いいの。」
「あのね。もしよかったら、今のじゃないけど少し前の隼人の合体ロボがあるから、貰ってくれないかな。お兄ちゃんたちはもう大きくなったから、おもちゃは要らないんだ。でも、捨てるのは勿体無くて、箱に入れてしまってあるんだ。他にもミニカーとかプラレールとかもいっぱいあるんだよ。見てみない?貰ってくれたら嬉しいんだけど。」
「琉生くん、ミニカー好き……。パトカーと救急車持ってる。」

それは、病院でsculptra 價錢看護師たちにプレゼントしてもらった、琉生の宝物だった。
会話を聞いて哀しげな視線を寄越した母は、何も欲しがらない琉生の本心を知っていた。琉生は何も言わないが、家に余分なお金の無いことを、きっと解っていた。
琉生が、どれだけきゅうこうじゃーが好きか、母も知っていたが、イラストが付いているだけで何割も高くなる品物を買ってやれなかった。

子どもたちのやり取りを聞き、この出会いに縁があるのなら、家族になれればと母は思った。
相手の連れ子の二人の子供たちは素直で、下の子ちゃで明るく、大人びた長男の方は琉生にも優しいようだ。
手をつないで仲良く歩く子供たちを眺めながら、母は上手くいった出会いに安堵し寺川に微笑みかけていた。

戸惑うこともあるだろうが、きっと兄弟はこれから一人っ子の琉生の支えになってくれるだろう。
母は、いつか一人ぼっちになる琉生の行く末を思ってめた。馴染みのラーメン屋に紹介された寺川という男は、最初は無口で神経質な印象だった。
むしろ無愛想と言ってもいいかもしれないくらい、口数は少なかった。
だが、ありったけの勇気を振り絞ったのだろうか、二回目に会った時いきなり、もしあなたさえ良かったら子育てを手伝ってくれませんかと、素直に頭を下げて美和を驚かせた。
高学歴で自尊心の高い男だと、認識していたから意外だった。
美和自身は釣り合い華欣自由行が取れないような気がしていた。